Moran全国TOUR「Freeze」ファイナル。
ツアータイトルが表す通り、2年の歩みを進めてきた彼ら自身の時間は
今日その歩みを一時止め、静かに凍てつく事となった。
眼前に広がるこの渋谷O-WESTのステージで彼らは何を見るのか。
そしてその先にどんな想いを馳せるのか。
2007年12月の結成から2年。
こうして文字にするとなんとも呆気なく聞こえてしまうかもしれないが、
この2年間の密度の濃さは筆舌に尽くし難いものであった。
そしてその日々の積み重ねの後、
全ての流れの向かう方向に素直に従った結果の活動休止―

とはいえ、彼らに葛藤が無かった訳が無い。
活動休止を念頭に置いた状態で敢行された夏のツアー。
最高の作品をという意思と同時に4人での最後の作品として製作された『Heroine』。
数々のトラブルに見舞われ、ぬかるむ足場を確かめながら
それでも確実に歩みを進めてきた日々の答えを、
そして自ら導き出した活動休止という道を、
彼ら自身も今日この場所で共に探し、受け入れようとしている。
足を踏み入れた開演前の会場で浮かんできたのは、緊張と少しの不安、
そしてこのような日にも抑えきれないステージへの期待感だった。
あらゆる感情が渦巻く中、会場はゆっくりと暗転。
薄幕に浮かびあがった幾何学模様に4人のシルエットが映し出され、Hitomiの口から歌声が零れ始める。
まだ表情の読み取れない薄明かりの中、
穏やかにこの夜の幕を開けたのは彼らの1stシングル1曲目でもあった『Element』。
柔らかに響く音は緊張感をもゆっくりと絡め取っていく。
「ツアーファイナル『Freeze』、始めようか」
薄幕が落とされ、初めて見えたその目には全てを射抜く強い光。会場を見据えたHitomiが声高に叫び、
続いたのは『マニキュア』、そして『ハーメルン』。弾ける様に音に反応し、叫ぶオーディエンス。
…彼らのライブは自己コントロールを麻痺させる何かがある。
劈くノイズに煽られるうち、知らず彼らの温度に触発され、気付けば枯れはてる程に熱を放出してしまうのだ。
そしてその熱は波紋のように広がり、徐々に会場の温度を上昇させていく。
「…サボテンって誰も触らないじゃない?自分の身を守る為に一生懸命棘を作って、
でも、花は咲くんだよ。
自分の身を必死で守りながら、でも誰かに寄って欲しい、
見て欲しいって想いを本当は抱えてるんじゃないかって思うんだ。」
広がるような円を描くスクリーンとさざめく光が重なり始まった『カクタス亜科』。
優しい音で紡ぐ言葉は、触れた物全てを凍らせながらそれでも温もりと愛を求めて彷徨う、
彼らが自身のバンド名として掲げたモランという生き物の姿にどこか重なって聴こえる。
穏やかに奏でられる音に相反する、悲しい言葉とほの暗さ。
心地よさの中、しかし確実にどこかで感じる違和感が胸の内側に傷をつける。
それはともすれば不快感にもなりうるはずなのに、よりその違和感を欲してしまうのは何故なのか。
冷たさと熱さが共存する、捕らえどころの無い距離感に翻弄されたまま、
ライヴは『寡黙の夕べ』、そして燃え上がる炎に照らされた『rub』、
『人間の人間による人間の為の恋路』で後半へと雪崩れ込んでいく。
「1人1人が最高の景色の欠片になって、
俺の胸の中に残ってください」
ほのぼのとした雰囲気のMCの中、
急遽アコースティックver.という形で演奏されたのは、
初期から演奏されてきた楽曲でもある『目下の泥濘』。
先程見せた激しさとは対照的に、包み込むような柔らかさを見せる。
一見無秩序に散りばめられた色が重なり合い
1つの作品を完成させるかのようなその感覚は、
そのままMoranというバンドが持つ音楽性、そしてライブに象徴されている。
それを証明するかのように、続いた『Lost sheep』で覗かせたのは、
一転、行き場を持て余すような不安感。
淡々としたリズムが呼び起こす不穏な空気に苛まれるうち、
天地左右も解らなくなるような不可思議な感覚に飲み込まれる。
「無様だから美しいんだ」
混乱した頭を醒ますかのようなHitomiの咆哮に続いて演奏されたのは『LOSER’S THEATER』。
直線的な声と刺さるギター、1打ごとに弾ちぬくようなスネアの音。
曲中上がったZillの叫びも、その気迫と同じく自然に漏れ出してきたものだったのだろう。
全員がドラムを中心に向かい合い目線を交わす。
絶妙な緊張感と衝動に突き動かされるまま、流れるようにライブは進んでいく。
立ち上がるCO2の柱に煽られ走り出した本編ラストの『Stage gazer』。
ひたすらに、全てと向き合うように不乱に演奏する4人の姿に走り抜けた2年という月日の記憶が、
ステージ上に揺らめく靄と重なるように脳裏に浮かんでは消えてゆく。
しっかりと会場を見つめながら、確かめるように歌うHitomi。
休止前最後のインタビューで「みんなの中にしっかり残るライブを作りたい」と語っていた
彼の言葉を不意に思い出した。
アンコールでは今日のステージに抱いた決意とオーディエンスへの想いを語り、
速速ver.での『sea of finger』、そして前半で演奏された『マニキュア』をここで再び演奏。

「ここでくたばりたいんだ、愛しいお前達の全てをくれよ」
激しい感情の全てを叫び始まった『今夜、月の無い海岸で』。
打ち寄せる波に誘われるように、踊るように深いところへ。
そして打ち寄せる波は『party monster』のイントロが流れ出す頃、
いつしか光の波へと変わっていた。
夢と錯覚してしまうほど、あまりに幻想的な光景。
この場所に集まった1人1人の抱く感情が、光が、集まって渦を作る。
そして入り混じる様々な感情の波に比例するかのように、
激しさを増す音はラストに向かって加速していく。
「大切なことなんて俺にとってちょっとしかないんだ。
だから大切な事を歌にこめるようにしてる
君達の名前、命。俺にとって、とっても大事なんだよ。
例えば笑顔もそうだし、泣き顔もそうなんだ。
メンバーも凄い大事。普段照れくさいから言わないけど。
俺は自分自身もメンバー1人1人も凄い大事だし、
君達がくれる声や視線、指、景色が凄く大事で愛しくて、
それだけで生まれてきてラッキーだなって思うんだよ。本当に。
俺は本当にラッキーだよ。
歌いたい事があるからさ。
キミがこの世に産み落とされた命、心、
それがとても愛しくて仕方ないんだ。

最後この曲に君達の名前を精一杯込めるから、
ちゃんと聞いててよ。
強く、叫ぶから。
愛しいHolic達へ。」
止まぬ声に招かれた3度目のアンコール、
客席の全てをゆっくりと見渡しながら素直な感情を
湧き上がるまま話したHitomiが、
そしてVelo、Zill、Soanが見たのはどんな景色だったのだろう。
最後の最後を飾ったのは『同じ闇の中で』。
張りつめる空気の中、響く声に会場中が耳を澄ませ、
叫ぶように、時に語りかけるように歌うHitomiの声に柔らかな音色が重なっていく。
涙も、言葉にならない想いも―
この日この会場の全ての人に浮かんだ感情は、
それがマイナスでもプラスのものでも、そのものが即ち彼らへの愛であったと思う。
そしてその全てをやがて氷が溶け出すその日まで、
今日この瞬間のままで凍りつかせて。
先のことなど誰も解らない。
だけど、例え時が経っても、遠く離れていても、
彼らと私達が共有したこの時間はこれからも近くにあり続ける。
そして彼らとともに積み重ねたこの日々の先に、
それぞれの未来がつながっている。
時間は流れ続ける。普遍のものなど世の中に有りはしない。
それでも目を閉じ、闇に身を委ねて耳を澄ませば、
彼らの音も、声も、温度も、全てはそのままにそこにある。
闇の中で、いつでも会える。
そして凍りつけた今日この日の記憶は、
いつまでも私達の背中を押し続けてくれる。
「繋がってる、どこまでもキミがいる場所に。その手に繋がってるから。」
【2009.12.02 Shibuya O-WEST 『Freeze』 Set list】
1.Element
2.マニキュア
3.ハーメルン
4.在り方
-MC-
5.カクタス亜科
6.君のいた五線譜
7.寡黙の夕べ
8.Helpless
9.Silent whisper
10.rub
11.人間の人間による人間の為の恋路
-MC-
12.目下の泥濘
13.Flower Bed
14.Lost sheep
-MC-
15.LOSERS' THEATER
16.Sea of fingers
-MC-
17.Stage gazer
en1.
18.Sea of fingers(高速ver.)
19.マニキュア
20.今夜、月の無い海岸で
en2.
21.Silent whisper
22.Stage gazer
23.Party Monster
en3.
24.同じ闇の中で
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